新 あっさんの冒険

これは、自然あふれた村に生まれた、ひとりの少年の長きにわたる冒険の物語である。

高い山肌に生い茂る木々、そのふもとを流れる透き通った川。
その恵みを受け、人々が生きる為に必要な作物を実らす田畑。。

その日はタンポポの綿毛が飛ぶのに最高の気候であった。
ひがんばなを両手に持った二人の少年が、キャッキャといいながら、あぜ道を駆け抜ける。
しばらく走ると、流石に疲れたのか、だんだんその足の運びは悪くなり、ついに両手を膝で支え、はぁはぁ、と息を荒立てながら立ち止まった。

「…もう追ってこないやろ。あの親父」
ひとりの少年は口の中の唾液を飲み込みこんだ。
ふと見るとその額にはかなりの汗が噴出している。
「うん、たぶんね。。。でも今回はちょっと危なかったね」
胸を押さえると鼓動が怒涛の如く早くうっている。
「流石にねぇ。ピンポンダッシュで俺たちのように命を賭けている人って、全国探してもおらんのちゃうかなぁ。あっさん」
その少年は微笑しながら言った。
「そうやろね。今日はこうちゃんのアシストがなかったら、絶対捕まっていたわ」
あっさんはもうひとりの方の肩をポンッと叩いた。

じゃあ、お決まりの場所に行こか☆

二人は手で汗を拭いながら、歩き出した。